やさしさにたどり着くための、“彼女”の物語。

昨日、漫画「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」を今更ながら読んだのですが、無事死んでしまったのでご報告です。

なんだかんだで投稿までトータル10時間近く書いててバカなんじゃねーかなって思いました。やっぱり牧之原翔子が大好きなんだなモ

「どうせ既存の話をなぞっただけ」

「ゆめみる少女」の漫画版が出た2023年、僕はそう信じて疑いませんでした。

麻衣、古賀、双葉と3作目まで来て、次は豊浜だろうと思ってたら大穴ですっ飛んできた翔子の話。

ちょうどおでかけシスターで翔子の出番がなくてイライラしていたこともありますが、なにより「どうせ原作かアニメをなぞっただけだろう」と、当時は全く興味を持ちませんでした。

この適当さを、2年後に後悔することとなるとも知らずに。

夏休みの課題は最終日にやる派

大学生の長い長い夏休みも残りわずかとなった、2025年9月18日。
Kindleでエロそうな声優の写真集を漁っていたころ、その瞬間はやってきます。

あ、ゆめみる少女の漫画、思ってたより安いな…っていうかいつのまにか完結してるし

買っちまった、

ご注意ください!

ここからは「青春ブタ野郎」シリーズ、および漫画版「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」のネタバレを含みます。

まだお読みになられていない方の閲覧は非推奨です。一度手に取ってみることを強くおすすめします。

また、当記事で使用している画像はすべて各版権元に帰属いたします。

トドメの一手、“牧之原翔子視点”

読み始めたのが寝起き数分であることが信じられないくらい、朝の8時からバカでかい声を出してしまいました。

それもそのはず、この漫画は牧之原翔子の視点から見た「ゆめみる少女」なのだから。

いや、でもこの話は知っている…咲太との出会い、入院、ICU…

いや、知らんが???

そっか、咲太が脳死になり、翔子に心臓が移植された、正当に時が進んだ世界。ここが全ての始まりか…
いや、でもこれがきっとプロローグなだけで、次話からはきっと咲太サイドだろうな…

は?

なんかぬるっと翔子ちゃんの高校生ライフ始まったんだけど…

という調子で、全編が翔子サイドから綴られる物語に終始発狂してました。

これ、これだよ… 俺ずっとこれが観たかった

意思の形、そして重量感

翔子サイドとなったことで細かな部分の解像感がずいぶん上がりましたが、翔子の心情は特に顕著なものであると思っています。

特にそう感じるのが修羅場のシーン。アニメや原作ラノベでの翔子は、咲太をもてあそび、麻衣を手玉に取る、空気を引っ掻き回すただのふてぶてしいお姉さんでした。

しかしこれはただのウザい女ではなく、事故を回避するための手段。そして漫画では翔子側ですので、要所要所で言葉や行動を選んでいるような描写があります。

たとえば、麻衣が怒っている真の理由に気づかない咲太に対して(意外と鈍いですね…それならそれでちょうどいいかな)と様子を見てから次の展開を踏んでいたり、

修羅場に同席した双葉を見て(いつまで時間を稼げるか…)と考えていたりなど、特に反射神経で会話をしているように感じられたアニメとは異なり、結構いろいろ考えているんだな…と感じさせられます。

その後、修羅場の次の日には(…咲太君にも嫌われちゃったかな……)と少し落ち込む様子もあり、このふてぶてしさは事故を防ぐためにいろいろ考えた結果であるのだと、漫画を読むことでより自然に思えました。いや、ウザいけど。

それ以外にも、漫画版では翔子の決意がたくさん描かれています。

特に、咲太を助けるということを決めたときの、鋭くて重い翔子の決意と顔が忘れられません。

原作では掴みにくく、アニメではずっとニコニコしているように思えた翔子も、このコマを見ると印象がガラっと変わります。

たしかにそりゃそうなんすよ 咲太と麻衣の選択も重いけれど、過去を変え、自分の未来を閉ざしてでも咲太を助けるという翔子の選択が、そもそも特大の重さを持っているわけですからね

しかし、それでも迷うことはあるわけで。今後の展開を想定し、(後はわたしが咲太君の前から─…)と思い淀んだ際、わずかながらに涙ぐんでしまいます。

また、咲太に「生きていたい」と告げられるシーンで、翔子は「こんな辛い選択をさせてごめんね」と告げますが、その手前のコマでは何とも言えない表情をしています。

後悔と謝罪の感情であると考えるのが自然ではありますが、どこか「私だって…」みたいな表情にも思える…というのは少し考察しすぎかも(唐突の意思消失)

とにかく、原作やアニメでは直接的に触れられることのなかった「翔子の選択」が明るみになったことで、その時々の彼女の感情や決断の形や重さみたいなものが、漫画ではかなり鮮明になっているなと感じました。

かわいいお嫁さんを、世界一幸せにしろ

ずっと、このセリフを待っていました。

3巻の中盤、咲太の代わりに麻衣が犠牲になり、未来が変わってしまった世界。
ページをめくった瞬間、息を吞みました。

指輪をしている、牧之原翔子が。

…ああ、違うんだ。
そう理解するまでには1秒もかかりませんでしたが、飲み込むまでには10分かかりました。

初めて原作を読んでから7年。ずっと心の中で思い描くことしかできなかった情景が。
あの日、TOHOシネマズで見ることが叶わなかった展開が。
原作とスピンオフを読み漁れど見つからず、pixivをさまよっても満足できなかった、彼女が。

この紙をめくった先に望んでいたものが、すぐそこにある。
とても長かった旅の最後が、たった一振りの指の動作でいいのかと、なんとなく怖くなりました。

いや、それで構わない。だってずっと待っていたんだから。彼女を、“梓川翔子”を。

うわーーー!?!?

うっ…

あああっ………

ぁ………

バカ泣きした

うえーん(感嘆符)
どうすんの?これ いや、えっ?

みたいなことずっと言ってました。今も言ってます。

これが、牧之原翔子視点…。これが、漫画版「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」…。本当にありがとう、大好きすぎてやばい 3分の2好きな言葉が特大すぎる
あまりにも言語力の喪失が激しいので、もう読んでください バカ(何?)

そのほか、細かいことあれこれ

出題範囲が入場特典にまで及ぶエグ回

小学生翔子がスケジュールを書ききり、心臓も移植された、咲太と翔子が出会わない世界。記憶のない咲太と麻衣では、クリスマスイブのデートでもしかしたら事故に遭うかもしれない、と心配する翔子。

結局それは杞憂に終わりますが、ちょっと待て?これ、あれだ…「ホワイトクリスマスの夢を見る」だ…

アニメ版「ゆめみる少女」の第一週入場特典で配られた短編スピンオフの内容が、漫画に輸入されてる、そこまで拾ってくれるのか…。たしかに「赤い傘の楽しげな子」としてすれ違うので設定としては問題ないどころか正解なんだけど、ここまでやってくれるんだ…

最終巻の背表紙

これなのですが

有志が手書きで作った不可思議EDすぎてね…これ、そういうこと?
いやーそれにしてもこれえぐいよな、オタクってすごい

感想:壮大な伏線回収イベント

ついいつもの癖で「いつもお世話になっております」って言っちゃうの好き

完走した感想ですが、正直一言ではまとまらないくらいの想いです。

難しい内容をアホのテンポ感で進むアニメの補完どころか、原作ラノベの攻略本みたいな意味すらも持っているこの作品は、もはや漫画“版”ではなく、ひとつの確立した物語として語るほうが相応しいように思えます。

既存の物語なのに新鮮であり、既存の物語だからこその意味を持っている。翔子目線でないと作り出せなかった、深く重いダブルミーニングだと思います。

「ゆめみる少女」と「ハツコイ少女」を練りに練りまくり、それを翔子目線で一から組み立て直すという、相当な工程をを作者のえらんとさんは成し遂げてくれたのだと思うと、本当に感謝でしかないです。

個人的には、梓川翔子さんの話を見ることができたことが何よりも嬉しくて。

幸せなはずの梓川翔子が過去にやってくる理由が「大好きな人には幸せになってほしい」からというのはもちろんですが、その前に「咲太があの頃のように笑ってくれない、もしかしたら自分が苦しめていたのかも」という前提が入ってくるのが本当に良い解釈だと思いました。

正直咲太には笑っていて欲しかったですが、6年間も励まし続けてきたのに笑顔が戻らないという、結局麻衣の存在には勝てない部分も含めて、とても良い解釈であると思います。

あまりにも切なくて淡い、蜃気楼みたいなワンシーンですが、これをずっと見たかったんだと心の底から感じています。

俺がもし80歳だったら間違いなくサ終だと思います。こんなの読んだら否応なく成仏します。

まさか数年もの年を経て、期待していた展開を見ることができるとは思っていませんでした。

いや、もちろんスピンオフとしてでも書いてくれればな…という思いはありましたが、諦めのような気持ちがほとんどで。まあアニメの完結編でまた動いてる姿が観れるだろうから、それで手を打ってやろう、と。

と思っていたら漫画でこれだったので、本当にこの作品には頭が上がらないなと、改めて感じました。ありがとう。

おわり:青ブタを見たことがある全ての人に読んでほしい

です。

「良い作品は記憶を消してもう一度読みたい」とも言われますが、この作品に関しては記憶を持っていたほうが楽しめると思います。アニメを見て、原作も読んだけどよくわからなかった。という意見にこそ、この作品はバッチリハマると思います。これで理解できなければもう無理なので諦めてください。

そして原作同様、この漫画も、読めば読むほど新たな発見があります。もう原作を何周もしている玄人のオタクにも、ぜひ読んでもらいたい。実際自分がそれに近いと思いますが、正直、初めて原作を読んだときの感情に一番近いと、読み終えたときに感じました。

続編でもスピンオフでも、アニメでも二次創作でも得られなかった、心の底からの震え。本当に、はじめてハツコイ少女まで読み切ったときと似ています。

牧之原翔子からの視点で観た、やさしさにたどり着くための物語。
彼女の側から見た水平線までの距離も、長い長いものでした。