伸びる影から、目を背けないで。│田中琴葉「シルエット」に感謝を伝える日

2025年の最後の日はありがとうを伝える日であってもいいかな~と思ったので、こうしてキーボードをぶっ叩いております。

今年の田中琴葉をふりかえる

いちいち全て見ていたらキリがないので割愛しますが、今年は田中琴葉のオタクにとっては大きな1年だったのではないかなと思います。

メインコミュ第155回「ヒカリを見つけて」

メインコミュ第155話は、「アイドル」と「俳優」の間で揺れ動く琴葉と、その後の決意が描かれました。

あらすじとかは他でもやっていると思うので割愛しますが、大物女優である檜山さんから言われた「演技が認められたいなら、アイドルをやめて俳優になればいい」という言葉に、琴葉はひどく動揺してしまいます。

「やりたいことは演劇だけれど、見つけてもらえたのはアイドルだから」という琴葉の想い。それを、プロデューサーと会話を重ねていくことで解決していきます。

琴葉は最終的に「アイドルとして頑張りたい」というヒカリを見つけます。その決意も「誰かのためではなく、自分がアイドルでいたいからここにいる」と語られ、まるで始まりであるメモリアルコミュ第1話に回帰したような感じでした。

物語の最後、「アイドルじゃない自分を、みんなが見つけてくれるのか不安になった」と語る琴葉に対して返したプロデューサーの言葉は、このコミュを締めくくるにふさわしい一言でした。

「琴葉のことは、俺が必ず見つけるから」

「何回だって、琴葉と出会って、アイドルにしてみせる。絶対にな!」

メインコミュ第155話「ヒカリを見つけて」より

シルエット 田中琴葉

コミュと楽曲の実装とともに、SSRカードも1枚追加されました。

カードコミュはどちらかと言うと「シルエット」という楽曲についての要素が多めだったように思えます。「自分を支えてくれているプロデューサーに向けて歌えば、気持ちを届けれられるのではないか」と、Song For You!というカテゴリを100点満点で回収しているコミュだなと思いました。

特に覚醒後のカードには、心を打たれるものがありました。スポットライトを受けて舞台に立つ琴葉。その後ろには、4つのシルエットが描かれています。左から順に、コレット、草薙星蘭、「朝焼けのクレッシェンド」の琴葉、デストルドー総帥。
3人の役柄と1人のアイドルが、田中琴葉を通して投影されている。今の彼女を表現する、とても素敵なカードだなと思いました。

楽曲「シルエット」の実装

ここがゲームとしては一番のメインである部分ですが、田中琴葉のソロ楽曲「シルエット」もゲーム内に実装されました。

カードコミュを見てから改めて曲を聞いてみると、「プロデューサーに向けて歌った」という琴葉の発言がありえないほどにしっくりと来ます。見方によってはファンに対してでもあるけれど、プロデューサーへというほうが腑に落ちるものがあります。

シルエットで一番好きだったのはアピール。スペシャルのほうは自分を抱いてわずかに前進するだけなのですが、まさにいろんな自分を抱いて踏み出した琴葉そのもので、この一連のコミュを総括する素晴らしいものでした。

逆にアナザーはすごい踊っているのですが、最後は上を見上げるような体制になります。「あなたがくれたヒカリ」をPと仮定したとき、スポットライトを見上げる姿はまさに、プロデューサーに向けて「シルエット」を歌っているアイドル・田中琴葉を表現できていて、これもいいな~と唸りました。

ただ、個人的には2番が好きなので「誰にならずとも 私は私の光を纏えば この身体もこの心も もっと信じられるの?」が削られてしまったのは残念でした。

「シルエット」をようやく好きになれた

種田さんの休業と琴葉を重ねるオタクが嫌いな自分にとって、シルエットはずっと苦手な楽曲でした。

シルエットは休業を絡めて深読みする人が多くて、復帰後の披露も含めてひとつの美談になっています。この風潮が気に入らなく、楽曲にも苦手意識を持っていました。声優とキャラは同一視するべきではないし、もっと曲そのものを聞いて楽しむべきです。

だから、「シルエット」にフィクションの解釈が付いて本当に良かったと思っています。この歌詞が種田さんのことを歌ったものではなく、自分に悩みながらも一歩進む琴葉の曲となったことで、ようやく自分の中にすんなり落ちてきたというか、好きになることができました。

良いコミュとカード、そして何より最高の解釈が公式から出てきたことに、心の底から安堵しています。

アビス・コンヴィクション 田中琴葉

そんな「シルエット」から5か月。デストルドー総帥の「アビス・コンヴィクション 田中琴葉」が実装されました。この足…ですよね…

シルエットのカードにも影として存在していたキャラクター。
さまざまな自分を抱いて前に進んだ彼女は、どういう役を紡ぐのか…

覚醒後のコミュで琴葉は、総帥の持つ「信念の強さ」「人としての強さ」に憧れると語っており、「この役を演じることで自分も成長できる」と、しっかりとシルエットを踏まえたうえでのコミュで終始ニコニコでした。

特に「まだまだ長い付き合いになりそう」と言ってくれたのが良かったですね。もちろんシルエットとして纏ったほどに重要な役柄であるからというのもあるけれど、初出からカード実装までとんでもなく長い時間をかけていると思うので、特に昔からのプロデューサーは嬉しいことなのではないかなと思います。

俺の心境の変化とか

圧倒的お気持ちコーナーです。なんなら2025年ふりかえりレベルなまであります。重いです。

ずっと逃げてきた

もうずっと言っている気がしますが、僕はミリオンライブが嫌いです。

声優が復帰してくれたこと、運営が待ってくれていたことは本当に感謝するべきですが、それをずっと擦り続けるのは違うし、そのことでキャラを特別視するのは絶対に間違っています。
あとは普通に座長が嫌いだし、居酒屋セトリで盛り上がると思ってるなら早くやめて欲しいです。そして何よりお前らね!休むことって全然辛いことなので、そう易々と道具みたいに使わないでくれませんかね

そんな宗教的な理由があり、ミリマスはずっと避けてきました。こんなコンテンツの一角に住まうくらいなら無趣味でいいと本気で思っていました。
そんな中でただ、田中琴葉だけは大好きになってしまって。でもその前提にミリマスがあるなら無理だと、反射的に逃げていたような気がします。

全てを好きになる必要はない

しかし今回のコミュで、琴葉は自身の持つさまざまな“自分”を抱いて、前に進みました。
「俳優」と「アイドル」の間で揺れ動く気持ち。演劇で認められたい、けれど、周りからの評価はアイドルという固定概念に押さえつけられていて。そんな状況で彼女が出した答えは、アイドルをしながら演劇もするという「両立」でした。
それはSFYの覚醒後カードでも同じで、スポットライトを受けて立つ琴葉の後ろに伸びる4つの影は、3つの役者と1つのアイドルが琴葉を通じて出力されているものです。どれも自分であると胸を張ってシルエットを披露するこの1枚からも、彼女の選択が見て取れます。

ミリマス、ひいてはアイマス全体には“全てを好きにならないといけない”という空気があります。「アイマスですよ!アイマスー!」「アイマス最高!」の締めなんかは、まさにその最たるものです。

そしてそれは、自分自身もそうあるべきだと思っていました。自己矛盾になんとなくモヤモヤしていて、0%か100%でないといけないと決めつけていました。
だから、田中琴葉の担当にはなれないと思っていたし、その逆もしかりで、琴葉は大好きだけどミリマスそのものはどうしても好きにはなれませんでした。

しかし今回、いろんな自分を抱えて一歩進んだ琴葉を見て、僕も変わることができました。無理に好きになる必要も、無理に嫌いになる必要もないと気づくことができたのです。「好き」と「嫌い」の矛盾を許容できたというか、そういう気持ちを持っていても前に進んで良いんだと思えた、という表現の方が正解かもしれません。だって、どれも自分そのものだから。

見方を変えればこれもある意味“逃げ”です。けれど、理由をつけて全てから逃げていた現状よりはよっぽどマシだと思います。何よりこれが自分の限界だし、生まれ変わるくらいのやり直しを遂げないとミリオンライブのことは好きになれないと思います。

田中琴葉を利用してきた1年だった

ハマるコンテンツが次々消えていく自分にとって、田中琴葉というアイドルがいる「アイドルマスターミリオンライブ!」というコンテンツは、今年唯一と言っていいほどに動きのあるタイトルでした。
描きおろし絵のPOP-UP SHOPだけで「動きがある」なんて言えるオタクって本当に幸せだよな、もうないも同然だろ…

結局のところ、都合よく利用していたのだと思います。
もう他がないのです。「ミリマスにハマるくらいなら無趣味でもいい」なんて言ったけれど、本当はずっと怖くて。「物語の完結」「声優ユニットの卒業」は、思い出になることや忘れられることも怖いけれど、自分がどんどん身体だけになっていくことを実感したとき、本当の恐怖のはじまりであると感じました。

この恐怖から、田中琴葉と一緒に心中してしまいたい。けれど、ずっと嫌いだったミリオンライブに肩を入れることがどうしても許せない。アンビバレントな感情を抱えたまま、縋って、利用してきました。
でも、それも今日までにします。好きと嫌いが同居していたって、それも自分であると思えたから。

彼女から逃げることでも、彼女を諦めることでもない。
僕は、琴葉と変わることを選びました。

おわり

暗闇の中で光るのは、田中琴葉というひとりのアイドル。その輝きを正面から受けた僕の後ろに伸びるのは、矛盾という名のシルエット。
今年は、そんな輝きの発端である彼女に支えられ、悩まされて生きてきました。

この1年のわずかなヒカリだった彼女に「ありがとう」と伝えて、2025年の締めくくりとします。

明日は、担当アイドルに「よろしく」を伝えようと思います。